・No.06「UP
and DOWN」9/7/04
ライト兄弟の初飛行から6年後、材木会社を経営するひとりの若者は、生まれて初めて飛行機を見たときの感動から、自ら飛行機を作って商売にすることを決心しました。当時の飛行機の主な材料は木材だったのです。海軍のエンジニアである仲間とふたりで飛行機づくりの勉強をはじめたのですが、まず彼らがやったことは、飛行機の操縦を習うことでした。そして1916年、シアトルにある湖の畔にとうとう水上機を完成さます。
彼の名はウィリアム・ボーイング(William
E. Boeing)。はじめて作ったB&W複葉水上機の初飛行テストの日、遅れてきた操縦士を待ちきれず、ウィリアムは自ら操縦桿を握り初飛行に成功しました。このB&W複葉水上機はそこそこ売れ、Pacific
Aero Products Companyという独立した飛行機製造会社が誕生します。会社は翌年、Boeing
Airplane Companyと名前を変えますが、飛行機の需要はまだまだ少なく、決して安定した経営ではありませんでした。
第一次世界大戦が始まると、軍隊という大きな顧客に戦闘機が売れ、ボーイング社は一気に大企業へと成長します。しかし戦争が終われば戦闘機も必要ありません。しかも当時のアメリカには飛行機製造会社はいくつもあり、競争も激しかったのです。ウィリアムはもともとは材木会社の経営者。ボーイング社は家具の販売でなんとか生き延びていました。
1927年。ボーイング社は郵便配達のための飛行機を開発。シカゴ
ー サンフランシスコ間を飛ぶ航空郵便サービスを開始します。このエアメールサービスは大人気で、次第に人も一緒に運ぶようになり、はじめての旅客機を開発。ボーイング社は再び大企業への道を歩み始めます。
ところが1933年。フランクリン・ルーズベルト(Franklin
D. Roosevelt)が大統領になると、ボーイング社は再び谷間へと急降下を強いられます。大不況だった当時、一人勝ちに見えたエアメールサービスの不正を解明すべく、政府は調査委員会を設立。ボーイング社は独占禁止法違反とされ、ウィリアム自身は社会から「不正で金持ちになった悪党」というレッテルを貼られます。
しかしエアメールサービスの実状は高いリスクと飛行機の維持費などで、決して儲かる商売ではなかったようです。そうした言い訳もほとんどせず、ウィリアムはボーイング社を退社。そのまま実業界から引退。51歳のときでした。一方、ボーイング社は、現在のユナイテッド航空を含む3社に分割されてしまいます。
ボーイング社がふたたび飛び立ったのは、またしても戦争がきっかけでした。第二次世界大戦において、軍から大量の注文を受け、B29をはじめとする大型爆撃機を開発しました。戦争が終われば注文がなくなるのは前回同様。7万人以上の社員をリストラして、次なる挑戦、ジェット旅客機の開発を開始します。
まったく勝負の見えないギャンブルだったジェット旅客機の開発は大成功。ボーイング707の大量生産を始めると、小型旅客機727や737を開発していきます。なかでも737は世界中から多くの注文があり、現在までに3000機以上を販売、史上最も売れた航空機となりました。そして1960年代後半の巨大プロジェクトから生まれたのが、大型ジェット旅客機、ボーイング747。アメリカでは「ワイドボディー」、日本では「ジャンボジェット」という愛称で親しまれています。
ウィリアム・ボーイングが去った後も、会社は彼の情熱を引き継いでいます。旅客機で大成功を納めると、いよいよ宇宙開発へ乗り出します。人類を月へ運んだアポロプロジェクトに参加。軌道衛星や月面車を開発しました。その後も数々の惑星探査計画、スペースシャトルプロジェクトにも技術参加しています。
ところが経営の方は相変わらずのUP and
DOWNが続きます。70年代初頭には5万人規模のリストラもしました。そして砂漠の緑地化計画や風力発電といったエコロジカルなプロジェクトをはじめ、軍事面ではステルスの開発、宇宙では国際スペースステーションの建設、そして旅客機では超音速旅客機の開発を進めながら、今また、あらたな離陸の時を目指しています。
「悪名高き航空会社」
アメリカのビジネスパーソンに、日常生活で嫌いな物を3つ教えてくれと聞いたら、「飛行機」と答える人は少なくないかもしれません。落ちるから? いいえ、トラブルが多いからです。彼らが嫌いなのは、正確には「航空会社」です。
アメリカの人気ニュースキャスターがシリーズ化して特集するくらいに嫌われている航空会社、なにがそんなに悪いのかと言えば・・・ 飛行機が遅れるのはごく普通で、キャンセルされることもある。荷物がなくなる。チェックインに時間がかかりすぎる、乗り継ぎに何時間も待たされる・・・・ などなどです。
実際、飛行機に乗っているよりも、空港で待っている時間の方が長いのはあたりまえ。テロ後は荷物検査もめんどうさいし、乗り継ぎもしていないのに手荷物はなくなる・・・ これはたしかにアタマにきます。
対処法は、出発より2時間以上前に空港に行き、手荷物にはなくなっていい物だけを預け、その日のうちに目的地に到着できないことをあらかじめ覚悟しておく・・・ いやいや、予定の3日前からクルマででかける方が気が楽、という方もいるみたいです。
★ Websites
「Aerofiles」
ウィリアム・ボーイングが始めて作った水上複葉機、B&Wです。下の写真は66年の撮影。複製機です。
「シアトル情報」
シアトルのことなら、生活から観光まで情報満載です。特に国立公園の紹介は、写真もきれいでお勧めです。 |
バックナンバー
・創刊号 7/27/04
「どうしてこんなにアメリカが好きなのだろう?」
・No.01「THE KING」 8/3/04
・No.02「Chasers 追跡者たち」8/10/04
・No.03「オズ」8/17/04
・No.04「ウォーレン・バフェット」8/24/04
・No.05「Manifesto Destiny」8/31/04
・No.06「UP and DOWN」9/7/04
・No.07「一攫千金」9/14/04
・No.08「THE DRIVE」9/21/04
・No.09「スタインベック」9/28/04
・No.10「バーバンクの魔術師」10/5/04
・No.11「フラミンゴ」10/12/04
・No.12「ラバ遣いが観た宇宙」10/19/04
・No.13「Mickey D's」10/26/04
・No.14「世界の始まり」11/2/04
・No.15「リーディング」11/9/04
・No.16「MEN IN BLACK」11/16/04
・No.17「大統領への手紙」11/23/04
・No.18「花」11/30/04
・No.19「ボニーとクライド」12/7/04
・No.20「アポロ計画」12/14/04
・No.21「Remember the Alamo!」12/21/04
・No.22「What a Wonderful World」12/28/04
・No.23「KO」1/4/05
・No.24「Masters」1/11/05
・No.25「MTV cops」1/18/05
・No.26「フライヤー」1/25/05
・No.27「Sexual Elegance」2/1/05
・No.28「TRUMP」2/8/05
・No.29「WTC」2/15/05
・No.30「AMEX」2/22/05
・No.31「灯りが灯るまで」3/1/05
・No.32「Blues Bros.」3/8/05
・No.33「Indy 500」3/15/05
・No.34「ハーランドの受難」3/22/05
・No.35「The Music City」3/29/05
・No.36「Buried Alive In The Blues」4/5/05
・No.37「America's Cup」4/12/05
・No.38「背番号42」4/19/05
・No.39「白人マイノリティー」4/26/05
・No.40「イエロージャーナリズム」5/3/05
・No.41「ディマジオの恋」5/10/05
・No.42「Peanuts」5/17/05
・No.43「Chocolate Town」5/24/05
・No.44「Enterprise」6/1/05
・No.45「Amblin」6/7/05
・No.46「SETI」6/14/05
・No.47「道」6/21/05
・No.48「ARPA」6/28/05
・No.49「The United Taste of America」7/5/05
・No.50「カリフォルニア・ワイン」7/12/05
・No.51「Ellis Island」7/19/05
・No.52「約束の地」7/26/05 |