・No.08「THE
DRIVE」9/21/04
アメリカンフットボールのチャンピオンチームを決めるスーパーボウルはアメリカ最大のスポーツイベント。1988年度は、シンシナティー・ベンガルズとサンフランシスコ・49ersの対決だった。ベンガルズがフィールドゴールを決めて3点追加、16対13でリードした。この時点で残り時間は3分20秒。勝負はほとんど決まったようなものだ。
---ちょっと解説!---------------------------------------
アメフトを知らないという方のために、最低限のルールを説明します。アメリカンフットボールは、2つのチームが攻撃と守備に分かれて、ボールを敵陣まで運んで得点を競うゲームです。お互いの陣地間の距離は100ヤード。攻撃チームは、ボールを持って走るか、投げてパスをするか、キックするかしてボールを敵陣へと進めていきます。パスを受け取り損なったり、ボールを持った選手がサイドラインの外に出たり、膝が地面についたら、そこで1回のプレーが終了です。攻撃チームが4回以内のプレーで、ボールを最低10ヤード前に運べなければ、攻撃権は相手チームに移ります。
得点方法は、タッチダウンとフィールドゴールの2種類。タッチダウンは、パスボールを相手陣地内で受け取るか、手に持って運び入れたときで、得点は6点。フィールドゴールはゴールポストにボールを蹴り入れたときで、3点が入ります。タッチダウンした後は、攻撃側は次に、二つのプレーのどちらかを選択することが出来ます。一つはキックでゴールを狙うプレーで、成功すれば1点追加され、もう一つは、再度タッチダウンを狙うプレーで、こちらは成功すれば2点が追加されます。ほとんどの場合、確実に点数が稼げるキックの方を選ぶので、タッチダウンすると実質7点入ることになります。
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続く49ersの攻撃は、敵陣まで95ヤードの距離からのスタート。得点するにはフィールドのほぼ端から端まで進まなくてはならない。残り時間は3分10秒。プレーが始まると、ボールを受け取る役割の選手は決められたコースに向かって走り始める。彼らが予定のコースを走れるように、敵を押さえ込む役割の選手もまた、それぞれ決められた通りに動き始める。そしてボールが投げられる。一連の動きには、前もって決められた300以上のパターンがある。プレー前の40秒間に、指令塔であるクォーターバック(QB)は次に取るべき作戦パターンを決め、ボールを投げるのだ。予定通りの動きができれば、選手は振り返ることなく、走りながらQBからのパスボールを受け取る。アメフトは、強い肉体と高い知力を必要とする緻密なスポーツなのだ。
49ersのQB、ジョー・モンタナ(Joe
Montana)は冷静だった。残り試合時間が残り少なくなっていく中、冷静に、一つずつ、正確にパスを通していく。ボールを受け取った選手は、すぐにサイドラインの外に出てプレーを止める。これで次のプレーが始まるまで、試合時間を刻む時計が止められるのだ。
ペンシルバニア出身のジョーは、カレッジ・フットボールの名門、ノートルダム大学でQBとなった。チームを全米チャンピオンにまで導いた彼は、学生時代、7回の逆転劇を演じて有名になった。プロになってからも数々の伝説をつくり、その神憑ったプレーはモンタナ・マジックと呼ばれていた。
しかし、この第28回スーパーボウルでは追いつめられていた。ジョーは正確なパスでボールをドライブしてきたが、残り1分15秒、チームは反則をとられ、10ヤードの後退。敵陣まで45ヤードとされてしまった。ベンガルズのヘッドコーチ(監督)、サム・ワイチはほとんど勝利を確信していたが、以前49ersのコーチとしてジョーを育てた彼は、モンタナ・マジックの怖さもよく知っていたのだ。
そして全米が固唾をのんで見守るなかプレーは淡々と続き、とうとう敵陣まであと10ヤードまできた。あと1プレーで敵陣まで届く距離だ。しかし残り時間は39秒。サム・ワイチの読みは、名レシーバー、ジェリー・ライスへのタッチダウン・パスだった。ジョーの狙いももちろんパスによるタッチダウンだ。そしてプレー開始。しかしジョーが放ったパスの先はジェリー・ライスではなく、ジョン・テイラーだった。タッチダウンのフォイッスルが鳴ったとき、残り時間は34秒だった。
モンタナ・マジックを神の領域にまでしたこのゲームは、「THE
DRIVE」としてその後何度も語り継がれることになった。ジョーは翌年のスーパーボウルで、デンバー・ブロンコスを大差で破り、4度目のスーパーボウル・チャンピオンとなり、「史上最高のQB」の名を手に入れたのだ。
「スーパーボウル」
アメリカのスポーツ好きに「一番楽しみなスポーツイベントはなにか?」と質問すると、1/4の人が「スーパーボウル」と答えるそうです。その数は2位の「(野球の)ワールドシリーズ」の3倍にも及び、毎年の視聴率は40%を越えるのが常です。
1月下旬もしくは2月の初頭、前年のシーズンとプレイオフを勝ち抜いてきたAFCとNFCの両リーグの覇者が戦うスーパーボウル。仲間で集まってホームパーティを開いたり、スポーツカフェで観戦したりと、アメリカはお祭り騒ぎになります。試合当日の昼過ぎには、スーパーマーケットにずらりと並んでいたポテトチップスの棚はほとんどカラになり、道路の交通量は減り、宅配ピザの注文数と、試合を見に行った留守宅の空き巣事件が増える日です。
経済的な影響も大変なもので、開催地には3〜4億ドルもの経済効果があるそうです。ゲームの放映権を掴んだTV局は、破格の値段でCM枠を売りに出します。30秒の枠で200万ドル。参加する企業は有名な映画監督を使ってCMを作成。視聴者の投票によるランキングも行われます。
★ Website
「NFL JAPAN」
アメフトの基本ルールがわかります。試合の進め方やポジションの説明、観戦のポイントまで解説されています。 |
バックナンバー
・創刊号 7/27/04
「どうしてこんなにアメリカが好きなのだろう?」
・No.01「THE KING」 8/3/04
・No.02「Chasers 追跡者たち」8/10/04
・No.03「オズ」8/17/04
・No.04「ウォーレン・バフェット」8/24/04
・No.05「Manifesto Destiny」8/31/04
・No.06「UP and DOWN」9/7/04
・No.07「一攫千金」9/14/04
・No.08「THE DRIVE」9/21/04
・No.09「スタインベック」9/28/04
・No.10「バーバンクの魔術師」10/5/04
・No.11「フラミンゴ」10/12/04
・No.12「ラバ遣いが観た宇宙」10/19/04
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