・No.09「スタインベック」9/28/04
愛犬チャーリーを連れたアメリカ一周の旅は4ヶ月に及んだ。キャンピングカー「ロシナンテ号」の名は、ドン・キホーテの愛馬からとったものだ。この旅で彼は、自分の素性は明かさず、出会う人々と気さくに語り合うことにしていた。
ジョン・スタインベック(John Steinbeck)はカリフォルニアの農場でアルバイトをしながらスタンフォード大学で海洋生物学を学び、やがて作家として創作活動をはじめました。彼はアメリカとアメリカ人を深く愛した作家でした。アメリカの精神を愛し、アメリカの問題点さえも愛していました。
彼は言います。「滅びる国の国民は、現実に寛大であり、未来を拒絶し、過去の偉大さと栄光に満足している。(中略)陶酔感が薄れて寛容となり、苦悩がやわらいで鈍痛となる」。こうして自国を批判した彼はまた、アメリカの若者たちがこのような状態に満足せず、怒りを覚えて世の中に反抗している姿に、将来の希望を持っていました。ありあまるエネルギーは、たとえそれが怒りであってさえも、これこそが移民たち祖先の精神である。たとえエネルギーの使い方がネガティブであっても、エネルギーが枯渇していることに比べたら、そんなことは大した問題ではないというのです。
「われわれは時に失敗し、誤った道をとり、新しく継続するために立ち止まり、腹を満たし、傷口をなめた。しかし絶対にあと戻りはしなかった。絶対に」
「アメリカとアメリカ人」 深沢俊雄 訳 スタインベック全集16 大阪教育図書
チャーリーとのアメリカ一周旅行を始めたとき、スタインベックは58歳でした。
「私は、自分の国を知っていないことに気がついた。アメリカ作家として、アメリカについて書きながらも、記憶を頼りに仕事をしてきたわけで、その記憶の水源地ときたら、いびつで間違いだらけ。私はアメリカの言葉を耳にせず、草と木とドブの匂いをかがず、丘と水を見ず、大気の色と光を目にしていなかった。ただ本と新聞から変遷を知ったにすぎない。それどころか、二五年間もアメリカに触れず、アメリカを感じていなかった。要するに、私は自分の知らないことを書いてきたのだ。ものを書く人間として、これは犯罪的行為にちがいない」
「チャーリーとの旅」大前正臣訳、サイマル出版会
これはアメリカを見直す旅でした。作家としての現状に対する怒りであり、新たな挑戦でもあったのです。旅先で彼は様々な人たちと出会い、友達になっていきます。ノーベル文学賞を取る前でしたが、すでにアメリカを代表する作家であった彼は、素性を隠し、ひとりの旅人として人々と接しています。迷った振りをして道を聞き、それを縁に会話をかわしたり、わざとチャーリーを民家に放し、犬が迷惑をかけて申し訳ないとあやまりに入っていくなど、人との出会いのためにアタマをひねったそうです。
こうした経験のなかから得られた知恵は、人は第一印象で判断してはいけないというものでした。見た目が無愛想な男でも、話してみると親切で、じつにいいヤツであることがある。自分のなかだけで人を決めつけてはいけない。
スタインベックは民衆が好きだった。アメリカの民衆を自分の目で確かめたかったのです。アメリカ独立宣言の中の「民衆」、リンカーン大統領が唱えた「民衆」。民衆こそが、本物の民主主義国家アメリカをつくったのだから。
「17 Miles Drive」
サンフランシスコへ旅行にいったときにでも、ちょっと時間を作ってサリナスまで足をのばしてみてください。映画「エデンの東」で観たレタス畑が今でもそこに広がっています。主人公キャルを演じたジェームス・ディーンは、ここからさらに2時間ほど南に走ったハイウエイで自動車事故を起こして亡くなりました。1955年9月30日のことです。いまでも道の脇に、彼の名前がかかれたモニュメントをみることができます。
サリナスから海を目指してドライブを続けると、半島の付け根にモントレー(Monterey)の街があります。モントレー水族館のまわりの海では、ラッコやアザラシが気持ちよさそうに昼寝をしているのをみられるかもしれません。
パシフィックグローブ(Pacific Grove)を抜けアシロマー(Asilomar)に出ると、17
Mailes Driveの入り口があります。静かな住宅街と海沿いを走るこの有料道路は、ペブルビーチゴルフコース(Pebble
Beach Golf Club)へと続きます。途中、クルマを停めて砂浜のボードウォークを散歩するのもいいでしょう。冷たい風が海の潮を巻き上げ、遠くの海岸線がかすんで見える砂浜を、朝夕には犬を連れた人たちがのんびりと散歩を楽しんでいます。
半島の反対側にはカーメル(Carmel)があります。芸術家が多く住むこの街の急な坂道の両脇には、小さな画廊や土産物屋が並んでいます。坂を一番下まで下ると、そこは真っ白な砂浜。クリント・イーストウッドがかつて市長を務めたこの美しい街を、チャンスがあったらぜひ一度訪れてみてください。
★ Website
「モントレー半島の生活・観光情報サイト」
モントレー周辺の観光ガイド。写真もたくさん見られます(「特集」と書いてあるプルダウンメニューの中の、Image
Tourにあります)。観光のモデルプランもあるので、参考にしてください。
★ Video
「エデンの東」
ジョン・スタインベック原作の映画「エデンの東」。DVDではまだ出ていないんですね。ちょっと驚きました。主演:ジェームス・ディーン 監督:エリア・カザン |
バックナンバー
・創刊号 7/27/04
「どうしてこんなにアメリカが好きなのだろう?」
・No.01「THE KING」 8/3/04
・No.02「Chasers 追跡者たち」8/10/04
・No.03「オズ」8/17/04
・No.04「ウォーレン・バフェット」8/24/04
・No.05「Manifesto Destiny」8/31/04
・No.06「UP and DOWN」9/7/04
・No.07「一攫千金」9/14/04
・No.08「THE DRIVE」9/21/04
・No.09「スタインベック」9/28/04
・No.10「バーバンクの魔術師」10/5/04
・No.11「フラミンゴ」10/12/04
・No.12「ラバ遣いが観た宇宙」10/19/04
・No.13「Mickey D's」10/26/04
・No.14「世界の始まり」11/2/04
・No.15「リーディング」11/9/04
・No.16「MEN IN BLACK」11/16/04
・No.17「大統領への手紙」11/23/04
・No.18「花」11/30/04
・No.19「ボニーとクライド」12/7/04
・No.20「アポロ計画」12/14/04
・No.21「Remember the Alamo!」12/21/04
・No.22「What a Wonderful World」12/28/04
・No.23「KO」1/4/05
・No.24「Masters」1/11/05
・No.25「MTV cops」1/18/05
・No.26「フライヤー」1/25/05
・No.27「Sexual Elegance」2/1/05
・No.28「TRUMP」2/8/05
・No.29「WTC」2/15/05
・No.30「AMEX」2/22/05
・No.31「灯りが灯るまで」3/1/05
・No.32「Blues Bros.」3/8/05
・No.33「Indy 500」3/15/05
・No.34「ハーランドの受難」3/22/05
・No.35「The Music City」3/29/05
・No.36「Buried Alive In The Blues」4/5/05
・No.37「America's Cup」4/12/05
・No.38「背番号42」4/19/05
・No.39「白人マイノリティー」4/26/05
・No.40「イエロージャーナリズム」5/3/05
・No.41「ディマジオの恋」5/10/05
・No.42「Peanuts」5/17/05
・No.43「Chocolate Town」5/24/05
・No.44「Enterprise」6/1/05
・No.45「Amblin」6/7/05
・No.46「SETI」6/14/05
・No.47「道」6/21/05
・No.48「ARPA」6/28/05
・No.49「The United Taste of America」7/5/05
・No.50「カリフォルニア・ワイン」7/12/05
・No.51「Ellis Island」7/19/05
・No.52「約束の地」7/26/05 |