・No.25「MTV
cops」1/18/05
1980年代初頭、音楽番組をひたすら流し続けるMTVが若者達の間で大人気でした。開局間もないこの放送局の成功をヒントに、新たな人気番組のアイデアをふくらませているプロデューサーがいました。当時、3大ネットワークのなかで最下位だったNBCテレビの娯楽番組責任者、ブランドン・ターティコフ(Brandon
Tartikoff)です。
ブランドンはさっそく、大ヒットしたドラマ「ヒルストリート・ブルース」(Hill
Street Brues)で一緒に仕事をしたプロデューサー兼脚本家のアンソニー・ヤーコビッチ(Antony
Yerkovich)を訪ねます。
「MTVのようにノリのいい音楽をバックに、ファッショナブルでスピード感のある派手な刑事モノをつくりたい!」
「MTV cops」と彼らが呼んだこの新しい番組企画、アンソニーはマイアミを舞台にした映画「スカーフェイス」をモデルに最初の脚本を書き上げると、刑事物をはじめとするテレビドラマ制作経験の豊富なプロデューサー、マイケル・マン(Michael
Mann)に送りました。
マイケルは以前からアメリカの麻薬取締局を題材にした刑事ドラマをつくりたいと考えていたので、ブランドンとアンソニーからの話は願ってもないチャンスでした。そして「MTV
cops」を、2人の刑事がマイアミを舞台に麻薬犯罪の潜入捜査で活躍するアクション・ドラマに仕立て上げたのです。
「潜入捜査」は、ブランドンが目指した「ファッショナブルでスピード感のある派手な刑事モノ」にはうってつけの設定でした。とかく小汚い服に無精髭のイメージが抜けない刑事ドラマでしたが、「金回りの良い麻薬犯罪者のなかに潜入して捜査する」のですから、刑事も高級ブランドに身を固め、フェラーリを乗り回す大義名分がつくわけです。
こうして生まれた新ドラマ「マイアミ・バイス」は、マイケル・マンをエグゼクティブプロデューサーとして制作が始まりました。刑事役の2人ドン・ジョンソンとフィリップ・マイケル・トーマスはイタリア製のスーツを着こなし、腕にはロレックス、クルマはフェラーリ。初回放送の2時間スペシャル版の制作には通常の倍の500万ドルが費やされました。次々と流れていくスピード感溢れるアクションシーンの後ろでは、ローリングストーンズ、ライオネル・リッチー、シンディー・ローパー、フィル・コリンズなどの曲が流れ、瞬く間に話題の人気番組になったのです。
初回の視聴率は23.4%、放送の翌日、ラジオ局には番組で流れた曲のリクエストが殺到しました。MTVを意識した刑事ドラマにはもちろん多くのミュージシャンがゲスト出演しています。たとえば、グレン・フライ、ジーン・シモンズ、リトル・リチャード、マイルス・デイヴィス、フィル・コリンズ、ヤン・ハマー、フランク・ザッパ、ウィリー・ネルソン、ジェームズ・ブラウン、シーナ・イーストンなどなど。ドラマのテーマ曲を含んだサントラ盤はミリオンセラーを記録、全米1位を11週間つづけました。
ドラマはほとんど見ないという音楽好きをもテレビの世界に引き込んで、瞬く間にアメリカを代表する人気シリーズになった「マイアミ・バイス」。当時冴えなかったNBCを業界No.1に押し上げたこのシリーズへの出演をきっかけに、後の大スターに育っていった俳優も少なくありません。
「スター前夜」
日本でもシリーズの一部が放映されて人気を集めた「マイアミ・バイス」、実は番組を取り巻くスタッフやちょい役で出演した俳優達の中には、後の大物がたくさんいました。
まずエグゼクティブプロデューサーを務めたマイケル・マン。今では「ビバリーヒルズ青春白書」で有名な制作者、アーロン・スペリングと共に、「刑事スタスキー&ハッチ」「ベガス」といった作品を送り出した他、映画では「ヒート」「インサイダー」「コラテラル」、テレビシリーズでは「CSI:科学捜査班」の監督も務めています。
監督は「ワイルド・スピード」「トリプルX」のロブ・コーエン、「ネゴシエーター」のトーマス・カーターらが務めたのをはじめ、脚本家ではジョエル・サーナウが「ニキータ」や「24」で日本でもおなじみになったほか、「ブラック・レイン」のクレイグ・ボロティンも参加していました。
キャスティング担当のボニー・ティマーマンは「アルマゲドン」や「パール・ハーバー」などで活躍。ブルース・ウィリスやジュリア・ロバーツなど、彼のキャスティングで「マイアミ・バイス」にゲスト出演した新人達は、その後も大きな仕事をつかむチャンスに恵まれ、大スターへと育っていきました。
★ Website
「MTV COPS MUSIC OF MIAMI VICE」
「マイアミ・バイス」ってなによ?という方はまずこちらから。ストーリー紹介をはじめ、番組内で使われた楽曲一覧などのデータベース、クルマや衣装にまつわる逸話の紹介もあります。 |
バックナンバー
・創刊号 7/27/04
「どうしてこんなにアメリカが好きなのだろう?」
・No.01「THE KING」 8/3/04
・No.02「Chasers 追跡者たち」8/10/04
・No.03「オズ」8/17/04
・No.04「ウォーレン・バフェット」8/24/04
・No.05「Manifesto Destiny」8/31/04
・No.06「UP and DOWN」9/7/04
・No.07「一攫千金」9/14/04
・No.08「THE DRIVE」9/21/04
・No.09「スタインベック」9/28/04
・No.10「バーバンクの魔術師」10/5/04
・No.11「フラミンゴ」10/12/04
・No.12「ラバ遣いが観た宇宙」10/19/04
・No.13「Mickey D's」10/26/04
・No.14「世界の始まり」11/2/04
・No.15「リーディング」11/9/04
・No.16「MEN IN BLACK」11/16/04
・No.17「大統領への手紙」11/23/04
・No.18「花」11/30/04
・No.19「ボニーとクライド」12/7/04
・No.20「アポロ計画」12/14/04
・No.21「Remember the Alamo!」12/21/04
・No.22「What a Wonderful World」12/28/04
・No.23「KO」1/4/05
・No.24「Masters」1/11/05
・No.25「MTV cops」1/18/05
・No.26「フライヤー」1/25/05
・No.27「Sexual Elegance」2/1/05
・No.28「TRUMP」2/8/05
・No.29「WTC」2/15/05
・No.30「AMEX」2/22/05
・No.31「灯りが灯るまで」3/1/05
・No.32「Blues Bros.」3/8/05
・No.33「Indy 500」3/15/05
・No.34「ハーランドの受難」3/22/05
・No.35「The Music City」3/29/05
・No.36「Buried Alive In The Blues」4/5/05
・No.37「America's Cup」4/12/05
・No.38「背番号42」4/19/05
・No.39「白人マイノリティー」4/26/05
・No.40「イエロージャーナリズム」5/3/05
・No.41「ディマジオの恋」5/10/05
・No.42「Peanuts」5/17/05
・No.43「Chocolate Town」5/24/05
・No.44「Enterprise」6/1/05
・No.45「Amblin」6/7/05
・No.46「SETI」6/14/05
・No.47「道」6/21/05
・No.48「ARPA」6/28/05
・No.49「The United Taste of America」7/5/05
・No.50「カリフォルニア・ワイン」7/12/05
・No.51「Ellis Island」7/19/05
・No.52「約束の地」7/26/05 |