US万次郎:「The Music City」


   

 メルマガ「アメリカ生活アドバイザーの随想」(7/27/04-7/26/05)を再編集したものです。

・No.35「The Music City」3/29/05

 それまで一部の技術者だけが研究用に利用していたラジオが急速に人々の生活の中に普及しはじめたのは1920年頃でした。裕福な白人層を中心に利用者が増え、1924年には240万の、そして1930年までには1200万世帯以上の家庭にラジオが置かれるようになったそうです。

 きちんとした電波管理法などなかった当時、電波を送信する自称「放送局」が乱立していました。個人はもちろん、様々な団体が好き勝手な周波数で放送していたのです。そんな中、毎日きちんと決まった放送を流すレギュラー・ステイションは1920年11月2日に開局した「KDKA」が全米初だと言われています。そして初めての商業ステイション「WEAF」がニューヨークに開局したのは1924年5月12日のことでした。

 1938年には全米500局ほどだった放送局は、1961年には2000局近くにまで増え、現在では4000局を越える数の放送局が日夜電波を発し続けています。

 数え切れないほどの番組がある中、1925年の放送開始以来80年に渡って休むことなく放送を続けてきた老舗のライブ音楽番組があります。アメリカの心の歌を全米に流し続けている「グランド・オール・オープリー」(The Grand Ole Opry)がそれです。

 始まりは1925年10月5日、テネシー州ナッシュビル(Nashville, TN)に開局したラジオ局「WSM」でした。保険会社「National Life & Accident Insurance Company」の出資で生まれたこの放送局は、他の放送局の2倍の送信出力で南部全域を受信範囲にしていたそうです。

 同年年11月28日、人気アナウンサー、ジョージ・ヘイ(George D. Hay)の司会で始まった「The WSM Barn Dance」は、瞬く間に「WSM」の看板番組として人気を集めていきました。最初の放送では、保険会社のオフィスビルの一室で80歳の名フィドラー(ヴァイオリニスト)、ジミー・トンプソン(Jimmy Thompson)が1時間に渡り演奏し続けたそうです。その後すぐに電話や電報によるリクエストが殺到。アパラチアに暮らす開拓民たちが、牧場の納屋(Barn)に集まり踊っていたBarn Dance Music は、ラジオという「ニュー・メディア」に乗って瞬く間にアメリカ南部に広がり、「カントリー・ミュージック」という新しい音楽ジャンルへと育っていきました。

 ジョージのちょっとした言葉遊びから生まれた「グランド・オール・オープリー」を新たな番組名として採用したのはそれから2年後のこと。オフィスビルの会場は狭すぎると、スタジオをナッシュビルのダウンタウンにある「ライマン公会堂」へ移動。毎週末の公開ライブ放送では、カントリーの他にも、ブルーグラスやロック、白人ゴスペルなどの演奏も放送していました。そして1974年からはナッシュビル郊外にオープンした「オープリー・ランド」に新設された、客席数4424席の「グランド・オール・オープリー・ハウス」からライブ放送を続けています。

 全米で人気の「グランド・オール・オープリー」のステージは、昔から多くのミュージシャンの憧れでもありました。もちろん将来のスターを夢見る若者達は毎週ラジオに釘付けだったことでしょう。メンフィスの街にも同じように心を躍らせながらライブ放送を聴いていた一人の青年がいました。まだ高校生だったエルビス・プレスリーです。

 後に「キング」と呼ばれるほどになったエルビスが、憧れの「グランド・オール・オープリー」に初出演したのは1954年10月2日のこと。デビュー・アルバムを2万枚も売った超新人スターのエルビスでしたが、保守的なカントリー・ファンに彼の音楽とダンスは受け入れられず、大ブーイングと共にステージを降りるという屈辱を味わいました。当時の司会者はエルビスに向かって「トラック運転手に戻りなさい」とまで言ったそうです。

 全米のカントリー・ミュージシャンたちが、一度は「グランド・オール・オープリー」のステージに立ちたいと夢見て集まってくるミュージック・シティー、ナッシュビル。この街のダウンタウン近くには、レコード会社と録音スタジオが軒を連ねる「ミュージック・ロウ」と呼ばれるエリアがあります。エルビスをはじめとするロックやカントリーのスター達が多くの名曲を録音しました。この街から生まれた音楽は「ナッシュビル・サウンド」と呼ばれ、最盛期にはアメリカで発売されるレコードの半数以上がナッシュビルで録音されていたそうです。


 アメリカにはラジオ局がたくさんありますが、そのほとんどはクリアチャンネルという会社に牛耳られています。「アメリカのラジオっていいよね!?」と素直に言いたくなくなるような会社です。ハワード・スターンという人気DJを紹介しながらいつかこの話をしようかと思ったこともあったのですが、楽しくないのでやめました。それに、簡単に日本語でまとめているブログも見つけたので、ここで紹介します。まぁ、これもアメリカの正体ってことで・・・。

町山智浩アメリカ日記---ベイエリア裏ガイド付」  


★ Websites

WSM Online - America's Country Station

 ナッシュビルのラジオ局「WSM」のウェブサイト。ちなみに衛星ラジオ放送 SIRIUSでも聴けるほか、「グランド・オール・オープリー」からのライブ放送はテレビのカントリー・ミュージック専門チャンネル「CMT」でも観られます。

Live365 Internet Radio

 無料のインターネット・ラジオ局から、人気カントリー局のリストです。「カントリー・ミュージック」ってどんなん?という方、お試し下さい。

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 「
どうしてこんなにアメリカが好きなのだろう?

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筆者プロフィール  |  Contact:manjiro@usmanjiro.com
  

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