・No.46「SETI」6/14/05
例えば遠く離れた街に暮らしている友達や家族に連絡をとりたいとき、あなたならどうしますか?電車や飛行機に乗ってわざわざ出かけていかなくても、手紙を出すか、電話をかけるか、もしくは電子メールを出すという方法があります。もしもこの銀河に私たち以外の知的生命体がいるとしたら、その存在を知らせるために、宇宙船を造ってわざわざ地球までやってくるでしょうか?やはり電話をかける方法を選ぶのではないでしょうか?
マンハッタン計画で最初の原子爆弾のテストを行った時のリーダーを務めていたフィリップ・モリソン教授は、戦争が終わると電波天文学の世界に引き込まれていました。当時コーネル大学に完成したばかりのシンクロトロン(電子加速器)を使ってガンマ線をつくることに成功していた彼の同僚がこんな誘いを持ちかけてきたのです。
「私たちはガンマ線をつくりだせる。誰かがこれをキャッチできるかどうか、宇宙に向けて送信してみないか?」
これはとても刺激的なアイデアでした。宇宙のどこかにいるかもしれない異星人に向けて、電話をかけてみようというのです。しかし電磁波は光の速度でしか伝わりません。こちらから電話をかけても、信号が遠く離れた星に届いて返事が返ってくるまでに、何万年も待たなければならないかもしれないのです。そこでまずは受信から始めることになりました。「どこか他の惑星で、私たちと同じことを考えている知的生命体がいるのではないか?ならば、彼らが送ってくる信号に耳を澄ませてみよう」というのです。こうして異星人探し「SETI」(Search
for Extraterrestrial Intelligence)が始まりましたが、考えなければならない問題がたくさんありました。宇宙のどこから、いつ、どの周波数で電話はかかってくるのか?
信号はどこからくるでしょうか?空全体に耳を傾けるべきか?特定の領域を集中的に探索するべきか?今のところ、おそらくその両方を行うのが理想的と考えられています。では「いつ」電話はかかってくるのでしょうか?これはどうにも予想のしようがありません。ですから、何度も繰り返し、同じ方向にアンテナを向けるしかないのです。そしてもう一つの問題は「周波数」でした。
空に向けて電波望遠鏡を向けると、さまざまな周波数の電波が私たちのところへやってくるのがわかります。低い周波数帯では宇宙からやってくる雑音を聞くことができますし、高い周波数帯では地球の大気の摩擦で生じる電波をキャッチすることができます。ところが両者の間に、比較的静かな周波数帯がありました。携帯電話で使っている周波数帯のちょっと上のところ、1GHzから10GHzのあたりです。
ここからさらに周波数帯を絞り込むアイデアがありました。生命が生まれるために必要なもの「水」です。水素ガスは1.42GHzの電磁波を、水酸基は1.62GHzの電磁波を発信しています。水素と水酸基をあわせると水になりますが、この1.42GHzと1.62GHzの間は「水の穴」と呼ばれ、雑音の少ない周波数帯でした。知的生命体が電話をかけるのに選ぶとしたら、悪くない周波数帯ではないでしょうか?異星人探しは「水の穴」周辺ではじめられました。
初めて「SETI」の探査報告が発表されたのは1960年のことでした。フィリップ・モリソン教授のグループとは別に「オズマ計画」と呼ばれるプロジェクトを統括していたフランク・ドレイク博士は、ウェストバージニア州のグリーンバンク電波望遠鏡で、くじら座のタウ星とエリダヌス座のイプシロン星からの電波を30日間に渡り観測したのです。異星人からのものと思われる有力な信号は得られませんでしたが、これを機に「SETI」は、1971年の「サイクロプス計画」、1985年の「プロジェクト・メタ」、1991年の「ベータ・プロジェクト」などへと広がっていきました。
他の多くの科学探査プロジェクト同様に、「SETI」が抱える問題は「資金」です。予算が議会を通らずにNASAからの援助が途絶えるなどの苦難もありましたが、惑星協会を通して集められた寄付金の他、例えば「プロジェクト・メタ」では映画監督のスティーブン・スピルバーグから、「ベータ・プロジェクト」ではアドバンスト・マイクロ・デバイス社、フルーク社、ヒューレット・パッカード社、インテル社などの企業からも援助が得られました。また、1997年から活動を始めた、分散コンピューティングを利用したプロジェクト「SETI@home」では、サンマイクロシステムズや富士フィルム、パラマウント・ピクチャーズなどが資金援助をしています。
現在までに異星人からのものと断定できる信号は確認されていませんが、「SETI@home」では1.42GHzの信号を3回に渡って確認したことがあります。しかしこの信号は、その後、消えてしまいました。政府や民間の「SETI」研究機関が、これからも探査を続けていくでしょう。そしていつの日か、地球から銀河へ向けて信号を発信する日も来ることでしょう。「私たちは、ここにいる」と。
「SETIに参加しよう」
「SETI@home」とは、宇宙から受信した信号の膨大なデータを世界中のパソコンを使って解析しようというプロジェクトです。カリフォルニア大学バークレー校やワシントン大学のコンピューター研究者やSETIの専門家4人が中心になってはじめました。最初にこの企画を考え出したのが、オンライン教育の専門家だったというのが興味深いところです。
プエルトリコにある世界最大の電波望遠鏡を使って集められた受信データを小さな断片に分割し、プロジェクトに参加している個人のパソコンに送ります。それぞれのユーザーがパソコンを使用していない時、「SETI@home」のプログラムが起動してデータ分析のための計算を行います。
インターネットに繋がるパソコンがあれば、「SETI@home」の小さなデータ解析プログラムをインストールするだけで、誰でも簡単に参加できます。個人だけではなく、チームを組んで参加することもできます。解析したデータ数や、意味のありそうな信号を見つけたかなど、競争性もあって話題になりました。
「SETI@home」
★ Website
「Team NIPPON」
日本最大の「SETI@home」参加グループ。「SETI@home」への参加方法など、日本語で説明を読むことができます。現在までの解析データ数は世界で18番目にランクインしています。 |
バックナンバー
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「どうしてこんなにアメリカが好きなのだろう?」
・No.01「THE KING」 8/3/04
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・No.04「ウォーレン・バフェット」8/24/04
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