US万次郎:「道」


   

 メルマガ「アメリカ生活アドバイザーの随想」(7/27/04-7/26/05)を再編集したものです。

・No.47「道」6/21/05

 アメリカがその国土を西へと向けて広がり続けていた1800年代初頭、新たな貿易や開拓の後をなぞるように「トレイル」が整備されていきました。メキシコとの貿易のために商人が通ったサンタ・フェ・トレイル。ロッキーを越えて太平洋岸まで新たな開拓地を目指したオレゴン・トレイル。そして東海岸からオハイオ川まで続くカンバーランド道路は、現在でも「The National Road」 と呼ばれる歴史街道として、アメリカ人に親しまれています。当時の道路は、もちろん舗装道路などではなく、多くの人や牛、幌馬車が通ったあとにできた、荒野の中の「足跡」のようなものでした。トレイルを整備して通行者から料金を取る、「有料道路」を考え出した人たちも、当時すでにいたようです。

 1869年には大陸横断鉄道が開通しますが、大陸のあちらこちらに点在する開拓民たちの村をつないでいたのはトレイルでした。連邦制をとるアメリカでは道路の整備はすべて州によりそれぞれ管理されていましたが、郵便などの公共事業のためには連邦政府が道路開発に干渉しないわけにはいきませんでした。全国の農村や開拓民たちの村を道路で結ぶべく、農務省が「道路調査室」(Office of Road Inquiry)を設置すると、連邦政府から各州に補助金が出されました。1893年のことです。

 全国規模での道路網の整備が本格的に始まったのは、自動車が普及しはじめてからでした。アメリカで最初のガソリンエンジンを積んだ自動車が売り出されたのは1895年。フォードによって大衆へ普及しはじめたのは1908年のことです。日本のJAFにあたる「AAA」(American Automobile Association)が生まれたのは1902年。アメリカ社会に道路の整備を呼びかける運動を続け会員にはオリジナルの道路地図を無料で配っていました。また、地域で寄付金を募ってはルートを設定し、道路を舗装して標識を立て、新たなトレイルを整備して地図に描き加えていったのです。この活動は全国で盛んに行われました。各地に様々な民間のトレイル協会が誕生し、それぞれにトレイルを整備していったのです。最も大規模なトレイルは、リンカーン・ハイウェイ協会がニューヨークとサンフランシスコを結んでつくった大陸横断道路「リンカーン・ハイウェイ」でした。当時からコンクリートで舗装されたこの道路は、今でもアメリカの歴史愛好家たちが、好んでクルマを走らせる街道のひとつになっています。

 こうして数百のトレイルがアメリカ中に整備されて行きましたが、それぞれが州ごとに管理されていたため、そのほとんどが細切れの道路でした。連邦政府は補助金を出してはいたものの、全米各都市を結ぶ道路網の構築にはほど遠い状況だったのです。

 連邦政府にとって、全国的な道路網の構築は軍事的にも大きな意味を持っていました。鉄道による物資の輸送には限界があります。また、有事の際に軍隊が使用できるような主要道路の建設も必要でした。そこで1919年には、陸軍の自動車部隊が各州の道路建設状況を調査するために、リンカーン・ハイウェイに派遣されました。さらに翌1920年には、ワシントンD.C.からサンディエゴまでを結んだバンクヘッド・ハイウェイにも派遣されています。

 こうした調査の結果を基に、1925年には全国道路網を視野に入れたUSハイウェイの建設がはじまりました。それまでそれぞれのトレイル協会が管理していた道路を隣接する州と繋げ、道路の名称も数字に置き換えました。シカゴからロサンゼルスまでを結ぶUS66号線もこのとき誕生したのです。

 しかしそれでもまだ、道路の細かな規格や交通規制などのルールは州ごとにバラバラの状態でした。完全な全米道路網の完成は、1956年の連邦補助ハイウェイ法の成立まで待たなければなりませんでした。この法律により、全米を網の目のようにつなぐ「インターステイト・ハイウェイ」建設のための予算を得ることができたのです。法案の成立は当時の大統領アイゼンハワーによるものでした。実は、彼は1919年のリンカーン・ハイウェイへの陸軍派遣に、中佐として参加していたのです。

 現在では、インターステイト・ハイウェイを使ってアメリカ国内をクルマで快適にドライブできるようになりました。ハイウェイ沿いには、ホテルやレストラン、ガス・ステーションが建ち並ぶ小さな町が誕生し、地方都市の活性化にも貢献しています。


「Get your kicks on R66」

 インターステイト・ハイウェイがもたらしたものは、快適なドライブと新たな町の繁栄でした。しかしその一方で、消え去っていった旧道や町もありました。「マザーロード」と呼ばれ親しまれたUS66号線もそのひとつです。

 シカゴからロサンゼルスまでを結ぶこのハイウェイの道筋は、ナット・キングコールの「Route 66」の中でも歌われています。

♪セントルイスからミズリー州ジョプリン。オクラホマ・シティーはとても素敵な街さ。アマリロからニュー・メキシコのギャラップ。アリゾナ州フラッグスタッフ、そしてウィノナ。キングマン、バーストウにサンバーナーディノ♪

 アメリカの経済が発展していくなか、この道路は物流の要でした。そして西を夢見て旅する若者や、自由を求めるイージーライダーたちが走り抜けてゆきました。バズとトッドのふたりが旅するテレビドラマ「Route 66」のヒットで日本でも広く知られるようになり、この道を走りたいがためにアメリカを旅する日本人は、今でも少なくありません。

 US66号線は、インターステイト・ハイウェイの整備に伴い1985年に地図上からその名称は消え去りました。現在では「Historic Highway 66」として、とぎれとぎれになりながらも、この道を愛する人々の手によって保存されています。


★ Websites

スワンの夢 アメリカ・ドライブ」 

 「スワンの夢」は女装趣味からニューハーフの方々までが集う新宿のスナック。ところがここのママさん、年に一回アメリカにドライブ旅行にいくのが趣味。全米の道路を走破する勢いで走り続けています。ドライブの記録はたくさんの写真と道路情報でいっぱい。これには万次郎もひれ伏すしかありません。

700枚の画像で綴るルート66旅行記」 

 66号線を走破した海さんのサイト。これから66号を走りたいと考えている 人は必見です。

バックナンバー

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 「
どうしてこんなにアメリカが好きなのだろう?

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・No.47「道」6/21/05

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筆者プロフィール  |  Contact:manjiro@usmanjiro.com
  

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