・No.50「カリフォルニア・ワイン」7/12/05
ハンガリー生まれのアゴストン・ハラジー(Agoston
Haraszthy)がカリフォルニアに移民してきたのは、ゴールドラッシュに沸く1800年代中頃のことでした。家族で果実園を経営していたアゴストンは、やがてサンフランシスコで葡萄の栽培も始めました。アメリカ中から金(ゴールド)を求めてやってくる人々に、安ワインが大変人気だったからです。彼は、より葡萄の栽培に適した土地を求め、ソノマ・バレーにたどり着くと、そこでヨーロッパ各地から取り寄せた300種以上の葡萄の苗を植えました。カリフォルニアにある天然の葡萄はワインには適さなかったため、この土地にあう新たな品種を探し出す必要があったのです。それは1862年当時、街中を巻き込んだ一大プロジェクトでした。
アメリカで最初にワインが作られたのは1560年頃と言われています。現地に自生する葡萄は独特の香りを持ち、これがワインにはあまり適さなかったことから、移民者たちはヨーロッパから苗を持ち込んで栽培していました。ところがフィロキセラと呼ばれる寄生虫にやられ、すぐに枯れてしまったのです。そう言うわけでアメリカで本格的にワインが作られるには、フィロキセラのいないカリフォルニアの開拓を待たなければならなかったのです。
1769年、スペインの宣教師がサンディエゴに修道院を建てたのをきっかけに、教会のためにワイン作りが始まりました。葡萄の栽培に適した地中海性気候をもつアメリカ西海岸で、ワインのための葡萄園は瞬く間に広まっていきました。ロサンゼルス近郊に最初のワイナリーができたのは1771年。1831年にはサンフランシスコに本格的な醸造所ができました。しかし何万人もの人々が訪れるようになったゴールドラッシュの時代には、質よりも量が求めらていたのです。アゴストンのプロジェクトが始まるまでは、カリフォルニア・ワインはあまり美味しいものではなかったのでしょう。
アゴストンはヨーロッパから取り寄せた数百の葡萄種の中から、カリフォルニアの風土に合うものを選定していきました。彼自身は1869年にこの世を去りますが、同年開通した大陸横断鉄道により、カリフォルニア・ワインはアメリカ中に知られるようになっていきます。このころにすでに「Charles
Crug」「Cobel」「Beringer」「Wente Brothers」といったワイナリーができていたのです。
ところが1870年頃から、カリフォルニアにもとうとうフィロキセラの被害が出始めました。カリフォルニア大学は葡萄栽培の研究をおこない、アメリカ産の葡萄がフィロキセラ耐性であることを突き止めました。そこでアメリカの葡萄に接木することにより、カリフォルニア独自の葡萄種を作り上げていったのです。そして1900年には、ヨーロッパで数々の賞を受けるまでになりました。
しかし困難は再び訪れます。1920年、あの禁酒法が発令されたのです。このため教会のミサや医療用のワインをつくることを認められたわずかばかりのワイナリーを残して、カリフォルニアのほとんどのワイナリーが破綻してしまいました。禁酒法は1933年に解除されますが、苗を植え直すところからはじめてワインづくりに使える葡萄が収穫できるまで、少なくとも3年はかかります。さらに優れたワイン職人がいなくなってしまっていたのは、葡萄園の復興以上に深刻な問題でした。
救いの光は大学にありました。禁酒法の時代も、大学でのワイン研究は許されていたのです。カリフォルニア大学デービス校では、果実研究を通して、新たな葡萄の品種改良と共に、多くのワイン醸造家を世に送り出していきました。カリフォルニア・ワインが本格的に全米に復活したのは1950年以降とも言われています。現在ではナパ・バレーを中心に、大小さまざまなワイナリーが、それぞれ独自の「カリフォルニア・ワイン」を作り続けています。
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